商いは楽しむ心なり 〜常識破る鋼管加工サービスの躍進〜
10. 楽しくなければ、経営じゃない
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西日本パイプセンター |
2002年11月、宮脇鋼管本社に隣接する約2700坪の土地に、鮮やかなオレンジとブルーのペイントを配した新工場が姿を現した。工場にかかる人員を最大限に減らし、鋼管製品の入荷から在庫、加工、出荷に至る物流効率を可能な限り追求した最新鋭の工場である。
宮脇はこの新工場に約12億円を投じ、宮脇鋼管が創業以来培った鋼管加工のノウハウのすべてを結集した。24時間稼動できる加工機械設備、本社事務所と工場を結んだコンピューターシステム、それにユーザーのトラックを待たせない出荷体制…。そして、工場には「西日本一のパイプ工場」という意味を込め、西日本パイプセンターと名づけた。事実、既存の本社工場を合わせると、宮脇鋼管の工場規模は国内最大級。なかでも建築材に使われる角パイプの販売量は西日本一で、特殊加工に至ってはどこにも真似できない全国一の地位を確立して、宮脇鋼管は名実ともに日本一のパイプ加工工場となったのである。
新工場の完成は、宮脇にとってひとつの感動であった。が、宮脇は「本当に感動することは別にある」と言う。
平日の夜。繁忙期ともなれば、社内には遅くまで残って残業する社員の姿がある。外出から帰った宮脇は、そんな社員たちをねぎらいながら一流ホテルで買ってきたパンを差し入れる。社員たちが喜んでパンを口にすると、社内に軽い冗談が飛び交う。
「ほんとに些細なことだが、頑張ってくれている社員が喜ぶ姿を見る時、私の本当の感動がある」。
そう言う宮脇は今、2005年の株式上場をめざして社員の人材育成に力を入れている。毎週、マナー研修を開催して、日頃の接客態度から経営理念の浸透まで幅広く指導し、「一流ホテル並みの接客」を説く。また、業界ではまだ珍しい成果主義を反映させた給与体系を導入して社内を活性化。長男の宮脇健専務以下、現場から意見を吸い上げるボトムアップの経営をめざしている。
宮脇は言う。
「当然、人間だから誰でも嫌なことはたくさんある。でも、そういう苦難を楽しく感じることができるようになって初めて一人前。自らの不安をプラスに考えられる人間を1人でも多く育てることが今の私の使命であり、教えることによって自分もまた成長できる」。
そして、次の目標である2005年の株式上場。その実現は宮脇が育てた80人の社員とともにある。 |