3. 企業の進化とマーケットニーズを冷静に読む解く戦略家
―大内邦春
損保会社という、まったくの異業種から結婚情報サービス業に転じて 15 年あまり。予想だにしなかった社長職に就いた大内邦春は、今、社長という責任の重さをこれまで以上に深くかみしめている。「2番手、3番手とは違う、最後に判を押す立場になると、まったく違う世界が広がっている」。邦春は、そう話す。
最もそのことを強く意識したのは、ベンチャーキャピタルやファンドなど、これまでとはまったく違う経営もしくは経済構造を作り上げている企業家たちと交流した時だった。彼らの経営スピードや情報収集、決断の仕方など、邦春にとってはすべてが強烈な印象として残った。「過去の延長線上で会社や仕事が存続するわけではないということを身をもって知りましたし、違う時代が来ているなあという感じだった」と振り返る。
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大阪本社社長室の大内邦春 |
「企業戦略をすべて自分で考えていたのでは、世の中のスピードに追いつかない」とも言う。これまでに蓄積した人脈をたどって、さまざまな人と会い、同業異業種を問わず、さまざまな分野から情報収集して、それらの成功・失敗例から次の戦略を練る。そして、マーケットニーズを読み、顧客と社内の中で長期的な利益の共有化を図る。それが邦春の経営モットーであり、そうした戦略を練る際には「孫子の兵法」も座右に置く。
そんな戦略企業家・邦春は、月の半分を過ごす大阪本社の社長室で、いつもじっくりと世の中の動きを熟考する。部屋には、パソコンと必要最小限の資料だけが整然と置かれたデスクと応接のソファ。デスクの背後には、人と街の流れが刻々と時を刻み、企業の盛衰を象徴するかのようなビル群がそびえる。そうした光景を背に、ひとり企業戦略を考える邦春の姿は、時に孤独ではあるが、その思考の先には、かつて人々の結婚を支えていた地域コミュニティーを結婚情報サービス業によって再生する、という大きな夢がある。 |