ビジネス・リンキング 〜塾経営から拓く総合教育の道〜
1. 第4の教育に賭けた青年
かつて、人は一生のうちに3つの場所で「教育」を受けると言われた。この世に生を受けて最初に学ぶ「家庭教育」、大人への階段をあがる「学校教育」、社会生活から学ぶ「社会教育」の3つである。この3つの教育を受けながら、人は成長し、自らの生きる道を探りあてていく。若き日の木村もそんな青年の1人だった。母親からは、さまざまな物事を実体験して自らの頭で考える感化教育を受けた。中学の時、情熱あふれる英語教師に憧れ、商社マン時代には潔癖孤高の哲学を心酔する上司に出会った。
しかし、感受性豊かな青年は同時に、情熱のない教育現場に落胆し、足を引っ張り合う会社という組織に失望した。数えきれないほどの転職を繰り返す日々。自分の道を探して本を読みあさった失業体験。そして、長い苦悩と煩悶の末、青年は第4の教育「塾教育」に活路を見出し、大阪・門真の地に小さな進学塾を立ち上げた。「学力不振の子供たちを引き上げられる、真の学科指導がしたい」。その強い志(こころざし)が唯一の支えだった…。
当時、まだ学校教育の補完機関でしかなかった「塾教育」に徒手空拳で挑み、その稀有な情熱指導で近畿有数の一大教育グループを築き上げた木村節三。その企業家としての歩みは、どんな時も自ら学ぶ姿勢を忘れず、常に新たな“教育”を社会に提言しつづける終わりのないサイクルである。 |