“安全”を開発せよ! 〜世界初、夢のナット開発に賭ける〜
9.好奇心が、夢のアイデアを生む
ナット・ボルト商品に限らず、若林がこれまでに考え出した開発・アイデア商品は100以上。現在、同社が所有する特許数も約 50 に上る。また、最近では、電力会社の鉄塔などにイタズラができないように、一度締めたら何があっても緩めることができないナット「クリッチロック」(仮名)を考案。開発と同時に特許出願し、すでに海外からも引き合いも来ている。若林は、「他にも、いくつも考案中の製品がある」と明かす。
産業界の現場や日常生活のあらゆるシーンで「安全性」が問われる現在、どこでも簡単に使えて、絶対的な「安全」を保証するアイデア商品は、考えれば考えただけ湧き出てくるのだ。
そんな若林の開発の基本は、世の中で出回っている既製品を、じっくり眺めるところから始まる。時には、製品を手にとって触れてみて、好奇心と観察力を駆使して、「ここは、もう少し工夫したら…」「この点はもっと便利にできるはず」と考える。普段から、モノの不便さを見抜く目を養っているか、自分ならどうするか。その好奇心や思考力が、新商品の開発やアイデアの源泉となる。
「要するに、モノに対して満足したらダメ。満足して、ボヤっと眺めているだけでは、開発はないに等しい」。若林は、そう言う。
そして、モノの不便さに気づいた時、それにどんなモノを付け加えれば、もしくはプラスしてやれば、より良い製品になるのか。さらに、考えを深める。その繰り返し。常日頃、あらゆるモノや物事に関心を持ち、記憶の中にモノの特徴やアイデアを意識的にプールしておけば、そう難しくないことだと言う。
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「好奇心と観察力と考え癖。この3つが、商品開発の基本」と若林 |
「すべてのモノや製品は、 A + B = C という組み合わせで成立している。ハードロックナットの場合はナット+楔、 U ナットはナット+ワッシャー。いずれも既製品だが、既製品をどう組み合わせるかで、新しい機能を持った製品が誕生する。それを考えることは、とても楽しい作業なんです」。
そう言う若林は、今も忙しい日々の仕事をこなしながら、社員全員が帰社した後の静かなオフィスで、または趣味の SL に乗ってリラックスしながら、ひとりアイデアを練る。将来は、会社を後継に任せた後、日々湧き上がるアイデアを考える商品開発に専念するのが夢だ。
「アイデアはいくらでも沸いてくる。だから、『これで十分』ということはない。もっともっと応用開発を重ねて、将来は会社を緩みナットの総合メーカーにするつもり」。
開発・発明に魅せられた東大阪のエジソンは、今も新たなアイデアを胸に秘め、虎視眈々と商品化するチャンスをうかがっている。 |