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起業家・吉田武彦・株式会社ビジョンメガネ前代表取締役
 

3. 仕事一筋のメガネ人生

ビジョンメガネ社長室

 午後8時を過ぎると、全国280店舗の店長から吉田のもとに次々にFAXが届く。送られてくるのは、各店舗のその日の営業実績や売れ筋、果ては顧客一人ひとりの来店時間から購入動機までを事細かに記した売上用紙だ。本社の営業や企画、開発など各部署の担当者がチェックしたあと、吉田はこの売上用紙の全てに目を通していく。毎日午後10時、最後の1枚が送られてくるまでこれを見届けるのが吉田である。夜に取引先との会合があっても必ず9時から10時には会社に戻って、売上用紙を読み込む。
 「翌朝、社員に売上げの集計を聞けば済む話ですが、その日にこの店長はがんばっとるな、この店はダメだなと言うてね、1件1件見るのが大変楽しいんです」。

 そう言う吉田はメガネの楽しさを誰よりも良く知る“仕事漬け人間”である。製品開発のアイデアに集中し過ぎて、新幹線に乗って車庫まで行ってしまったというエピソードがあれば、就寝中には寝言で社員を叱咤激励することもあるという。

 平成14年に社長職を妻に譲って取締役に退いたが、今も吉田の頭の中はメガネのことでいっぱいだ。普段、使用している机の後ろにはメガネの作業台があり、アイデアが浮かべばすぐに行動に移す。製品のアイデアを考えたり、店舗の陳列法やチラシ・DMの作成に至るまで、朝から晩まで24時間メガネのことを考えているのである。

デスクの背後にある吉田の作業台

 そんな吉田は5階にあるこの社長室を、会議以外ほとんど使わなかったという。ただ、部屋の本棚には創業以来、毎日の仕事の内容を書き留めたB5サイズのノートや、これまでに制作したチラシやDMがぎっしりと並び、モーレツに働いてきた吉田の仕事ぶりをうかがわせている。

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