メガネはアイデア産業 〜小売りから仕掛けるメガネ革命〜
11. アイデアがメガネ市場を変える
メガネはレンズとフレームという2つの商品からできている。だが、それだけではただの半製品に過ぎない。小売りが検眼をして、お客の視力に合ったメガネを提供して初めて完成品になるー。
メガネ業界では、昔からよくそう言われる。吉田はこの考え方を発展させた。メーカーのフレームにスワロフスキーを埋めたり、彫刻を施したり、メガネームという自分の名前を入れる工夫をこらしたり…。
「メーカー的な発想で、小売りが少しだけ手を加えて、世界でひとつのメガネを作る」。それが吉田の考える究極の姿。社長職を退いても新しいことに挑戦する意欲はまだまだ衰えていない。
吉田は隠居したら、ビジョンメガネの商品開発を行う会社をつくる予定だ。その名も「プラネット・ビジョン60」。大勢いる60歳以上の社員と一緒にビジョンメガネを退社し、年金をもらわずに生活できることを目標に仕事をするつもりだという。自由に商品開発を手がけ、完成すればビジョンメガネに売りに行く。買わなかったら、ライバル社に売りに行く。そういう自由な水が吉田にはよく似合う。
また、ビジョンメガネの未来を拓く切り札が、リニューアルしてさらに使いやすくなった『どこでもメガネ』と、現在開発中であるパソコンで補聴器を買えるシステムだ。この2つのシステムを使って吉田は新たに介護ビジネスのルートを開拓し、成熟産業と言われるメガネ業界で、貪欲に市場を創造しようとしている。
「メガネの市場はいま6000億円と言われていますが、インターネットを使えばあと3000億円は市場を創造できる。きっと、そのうち携帯電話でメガネと補聴器を作るソフトも開発できるようになります。その頃には商社や銀行と提携して、世界にも出ていく。まだまだメガネは面白いことだらけです」。
モノづくりの町が生んだメガネ販売の革命児は、いま世界を見据えている。 |