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起業家・吉田武彦・株式会社ビジョンメガネ前代表取締役

メガネはアイデア産業 〜小売りから仕掛けるメガネ革命〜

10. 「どこでもメガネ」開発秘話

どこでもメガネのショッピングページ

 メガネ店に入ってくるお客で、実際にメガネを購入するのは5人に1人である。それは今も昔もほとんど変わらない。だとすれば、もっとお客を開拓しなければメガネ業界はずっと需要が伸びない成熟産業のままである。

 このことは、長い間、吉田の大きなテーマのひとつであった。
 「メガネを買い替えたいと思っている人がもっと気軽に検眼できる機械ができないだろうか。それを、よくある写真のDPE店やクリーニングの取次店のようなイメージで、街角に置いてみたい」。
 どんな小さなアイデアも、思いついたら経費のことを考えずに、とにかく動き出さずにはいられないのが吉田である。早速、メガネの無人検眼測定機の開発に取りかかる。開発にそれほど時間はかからなかった。1年後、機械メーカーと共同で取り組んだ世界初のメガネ無人検眼測定機が完成した。

 ところが、測定機が完成して、いよいよ設置しようという時になって、意外な所から「待った」の声がかかった。人間の眼を検眼する測定機は通常、医療器具と見なされ、厚生労働省の認可が必要だったのである。どんな案件でも役所の認可を取るまでには膨大な時間がかかるもの。一気呵成で完成させた画期的なメガネの無人測定機は、世に出る一歩手前で暗礁に乗り上げてしまった。
 
 しかし、そんな行政の厚い壁は吉田にさらなるアイデアを考えさせることになる。吉田は「無人測定機がダメなら、今度はパソコンで視力を測れないか」と考えた。これにはさすがの幹部たちも目を丸くした。無人の視力測定機を設置するというならまだ分からないことはないが、それが「自宅のパソコンで検眼してメガネを売る」となれば幹部たちが驚くのも無理はない。

 だが、当の吉田は大まじめだった。半信半疑の幹部たちをよそに、吉田は「イスラエルのヘブライ大学に飛ぶ」と言い出した。通常、検眼は5メートルの距離で視力を測定するが、パソコンで測る場合、この距離を30cmに縮めなければいけない。そのためには優れたソフト開発力が必要となり、それができるのはインドかイスラエルしかないと考えたのだ。
 「イスラエル大使館に連絡をして、ヘブライ大学のしかるべき人を紹介してもらえ」。吉田はそう言って、幹部のひとりに指示を出した。とはいえ、イスラエル大使館もそんな問い合わせを受けたのは初めてで、手続きをするのに手間取った。

 そんな折、大阪ガスの子会社が動体視力の測定ソフトを開発したという新聞記事が吉田の目にとまる。吉田は大阪ガスの友人を頼って、すぐに行動に移すと、開発元の関西新技術研究所を訪れた。しかし、ここでも研究者たちの第一声は「動体視力を計るのと、人間の視力を計るのは根本的に違います」というものだった。吉田はそれでも「この世の中でできないことなんてあるかいな!」と食い下がり、NECと関西新技術研究所との共同開発に持ち込んだ。

 数年後、吉田は研究陣が開発したソフトで自らの目を検眼した。パソコンに向かって、画面の表示通りに右目を隠す。画面の4つの図のうち、どれが一番良く見えるかを答える。左目も同じようにやっていく。すると、表示された視力が自分の視力とピタリと合った。測定時間はおよそ10分ほどで済んだ。

 パソコンによる検眼システムを世界で初めて完成させたのである。吉田はこの検眼システムに、約1万種類のフレームからお気に入りを選べるシュミレーション画面を合体させて、このシステムを「どこでもメガネ」ショピング・システムと命名。いつでも顧客の好きな時間に自分のペースでメガネを買えるシステムを作り上げた。構想に5年、開発に3年の歳月を費やし、実に5億円の開発費がつぎこまれていた。
 「どこでもメガネ」は開設後の1年で約30万件のアクセスを記録。メガネの売り方そのものを根底から変える究極のシステムとして、各方面で高い注目を浴びた。
 「コンピューターの画面で人間の目を測るというのはメガネ屋にとってはバカげた考え。でも、それがビジョンメガネの夢やった」。
 吉田はその類い稀な開発力で、メガネの売り方そのものを変えようとしている。

 
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