ビジネス・リンキング 〜塾経営から拓く総合教育の道〜
9. 新聞の全面広告で宣戦布告
平成4年1月、毎日新聞に筆字で「昨今の外語学院にもの申す!」と大見出しを打った全面広告が掲載された。広告は、生徒達に真の語学教育を提供するという「教育第一主義」を謳い、同時にほとんどの英会話スクールが導入しているフリータイム制をあえて採用しないという内容。当時、社会問題となっていた英会話スクールに対抗するようなこのセンセーショナルな広告に、業界は色めきたった。KEC外語学院設立の宣伝広報である。木村は、さらに「真剣に学習する人のみ募集」と宣言し、生徒を勧誘する営業マンを一切置かなかった。そして、大胆にも英会話スクールが密集する最大の激戦区・梅田駅近辺に学院を設立したのだ。当然ながら業界の風当たりは強く、開校当時、KECには数本の妨害電話がかかったという。
しかし、木村には勝算があった。自信の根拠はKECが独自に開発したTP指導方式である。TP指導方式とは、体験的に言語習得ができる0〜10歳期を過ぎると、人は言語を論理的に学ぶ必要があるという理論に基づいたもので、日本人講師による理論実習とネイティブ講師による実践演習を融合させた両輪学習である。当時、ほとんどのスクールが英文丸暗記型かネイティブ講師偏重型であったことを考えると、画期的な指導方法であった。何より木村には、「教育そのものよりも生徒の勧誘に熱心なスクールに負けるはずがない」という思いが強かった。
この木村の大胆な大勝負はほどなくして答えが出た。KEC外語学院の生徒数は1年も経たないうちに予想人員を上回るようになり、近畿のみならず北は北海道から南は九州まで幅広い地域の生徒を獲得したのだ。
大胆な大勝負を乗り切ったKECはその後、大学生や社会人を対象にした資格取得のための学院設立へと進出。教育事業の多角化を図り、懸念されていた少子化問題も見事にクリアしていくことになる。
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