ビジネス・リンキング 〜塾経営から拓く総合教育の道〜
10. 魔法の方眼紙
外語学院が誕生した後もKECは毎年のように塾・予備校を開校する。加えて、平成9年には第3次産業革命と言われる情報化時代に対応して「KECコンピュータ学院」を設立。翌年には押し寄せる国際化の波や知価社会への転換をとらえて、「KEC日本語学院」「KEC速読学院」を相次いで開校していく。教育を柱とするKECの事業は、すでに創業間もない頃から始まった母親セミナー・父親セミナーの開催や独自の講師指導ノウハウを活かした社員教育会社「KEC実践教育企画(株)」、さらには社長や経営幹部の勉強会「あすなろ倶楽部」、法律の勉強会「四季倶楽部」などへと裾野を広げ、今や一大教育グループを形成するまでに成長していた。
こうしたKEC教育グループのめざましい成長は徹底した講師陣の育成もさることながら、木村のアイデアの豊富さによるところが大きかった。木村のアイデアは、常日頃から欠かさず行っている情報収集とメモ、それから豊富な人脈によって支えられている。そして、何か問題が生じた時、また新しいアイデアが浮かびそうな時、木村はいつもA3サイズの大きな方眼紙を取り出す。この方眼紙に鉛筆でチャートを作りながら問題の核心を一つひとつ紐解いていき、今、何をしなければいけないのかを書き出していくのである。この「マンダラ法」と呼ばれる企画・立案方法で、木村はいくつもの教育事業を展開してきた。
木村は言う。
「KECの始まりは子供の教育。でも、やっていくうちに子供を変えるためには親を変えなければ…と思うようになった。さらに、父親を変えるためには世間の会社を変えないといけない、会社を変えるためには社長を変えないといけない、という発想の繰り返しだった。そんな調子で広がってきた事業だから、つい最近までグループの売上げも把握していなかった」。
ひとつの事業から派生してきたニーズが、また次の事業を呼び込むリンキングビジネス。これが、KEC教育グループの拡大の源泉となっているのだ。
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