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肯定思考で克服した癌宣告
鉄屑市場の中から誰も思いつかなかった鋼管リサイクル業を始めたり、趣味の水上スキーでは全日本選手権で12回の優勝を果たすなど、宮脇の武勇伝は数多い。なかでも66歳の時に発病した舌癌を見事に克服したエピソードは、宮脇の意志の力を最もよく物語っている。
宮脇が診察を受けた阪大病院で癌を宣告されたのは、ちょうど念願だった新工場「西日本パイプセンター」が完成した頃である。診断によると、舌の奥に悪性腫瘍ができ、症状は末期癌の手前。生存率は40%。すでに腫瘍を取り除く緊急手術が必要な状況にあった。医者の勧めもあって、宮脇はすぐに入院。それから2カ月間の闘病生活が始まる。しかし、宮脇は「味覚がなくなること」を嫌って手術を拒否すると、放射線治療に専念する。
宮脇はこの闘病生活について、こう語っている。
「医者が言う言葉は常に最悪の事態を想定したもの。私はその言葉に影響されることなく、どんなことがあっても治ると自分に言い聞かせた」。
特に、宮脇が実践したのは「自分は絶対に治る」と言葉に出して言い続け、見舞いにきた知人には満面の笑顔で応対すること。そして、病室の応接セットを端に寄せて、趣味のダンスを踊り、癌が完治したイメージを自分の中で意識的に作ったのである。自然治癒力を信じた宮脇のこの行動は、やがて事態を急速に変化させた。2カ月後、MRI検査でも癌の腫瘍は全く見られななり、完治したのである。そして、医者も「何百人に1人の奇跡だ」といって首をかしげた。
宮脇は言う。
「人間の意識は普段に物事を考えている表層意識が20%しかなく、意識の多くは潜在意識が占めている。その潜在意識を言葉の力を使って活性化させれば、人間はどんなこともできるようになる。病気を克服する時も商売を成功させたい時も、良い口癖と笑い癖、プラス思向癖の3つの癖を心がけていれば、物事は必ず良い方向に向かう」。
そして、言葉の力によって自らを成功に導くこの信念は今、80人の社員にも受け継がれているのである。 |