商いは楽しむ心なり 〜常識破る鋼管加工サービスの躍進〜
6. 「もったいない」精神で発生管を発見
鉄屑業者を回って古鉄を買い付け、それを磨いて売る。宮脇が最初に始めたこの商売は鉄不足の時代だっただけにまずまずの売上げになった。そんなある日、意外な発見があった。見た目にはほとんど新品だが、ほんの一部にキズがある鋼管が屑鉄として売られていたのである。屑鉄業者の店主に尋ねると、「発生管だ」と教えてくれた。
発生管とは、鋼管を帯状の鉄板を丸めて製造する過程で発生する不良品のこと。当時は鋼管の全生産量の3%、現在でも1・5%の割合で発生するものである。不良品と言っても、一部にわずかなキズがあるだけだから、キズの前後は新品である。
「こんなパイプが鉄屑として売られているなんて、もったいない」。
そう考えた宮脇はパイプのキズ部分だけを切り落として、その前後を新品のパイプとして売るアイデアを思いついた。従来のように屑鉄として売れば、業者を通して電気炉メーカーに売られて鉄として再生されるが、電炉メーカーは屑鉄を高熱で溶かすため、大気汚染やダイオキシンの公害問題が発生する。しかし、新品のパイプ製品として売れば、公害の心配は一切なくなるのである。宮脇はこの社会貢献度の高さに目をつけた。
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宮脇はすぐに実行に移すと、鉄屑業者をくまなく回って、発生管を買い付けるようになる。そして、買い付けた発生管をユーザーのニーズに合った寸法に切断する商売を始めたのである。
そのうち発生管に加え、メーカーのオーバーロール品という余剰品も屑鉄市場で売買されていることを知った。宮脇はさらに商売への自信を深めた。
しかし、環境の時代である現在でこそリサイクルの発想は受け入れられやすい。が、当時はまだ高度経済成長が始まったばかり。鉄くずからわずかな発生品を見つけ出して、それを切断して製品化するような手間のかかることを誰が商売にしようと考えるだろうか。
「この鋼管リサイクル業は少しでも屑鉄市場のことを知っていて、少しでも頭を使う人間なら誰でも思いつく商売。でも、実際に鉄屑業者を歩き回って発生管を探すような地道な商売をしようと思う人はまったくいなかった」。
宮脇も後にこう語っているように、鋼管リサイクル業は普通に考えれば採算にのるような商売ではなかった。だからこそ、思いついたら即実行に移す宮脇の行動力をおいて鋼管リサイクル業を行う人間はいなかったのである。
実際、鉄屑業者を1件1件回って少量の発生管を見つけ出す作業は宮脇ひとりの手に余った。そのうち宮脇は鉄屑業者から買いつけていた発生管を、メーカーから直接買えないかと思案する。メーカーなら手間が省けるうえ、ボリュームも鉄屑業者から買いつける量とは比較にならない。宮脇は早速、メーカーの担当者を尋ね回った。しかし、どのメーカーからも相手にはされなかった。日本で最初の鋼管リサイクル業は早くも行き詰まったかに見えたが、宮脇はこの後、意外な突破口を見つけ出すのである。 |