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起業家・森康次・ナビオコンピュータ株式会社代表取締役

企業は永続と見つけたり 〜情報処理産業の水先案内人〜

2. 理想の生き方を見つけた学生時代

 森は昭和10年、兵庫県芦屋市で父・次郎と母・すみの長男として生まれた。父親は、祖父が築いた莫大な財産を相続して北海道で炭鉱やカーネーション農園などを経営する資産階級だった。そのため、幼年時代から大邸宅で何人ものお手伝いさんが働く裕福な家庭で育った。だが、20代という若さで方々に事業の手を広げた父親は、生涯、人に使われたことがなく、坊ちゃん育ちのわがままで、家庭内の教育はもっぱら母親が担当し、やがて日本が太平洋戦争へと突入すると、裕福な家庭は次第に傾いていった。戦後、小説家・太宰治が没落貴族を描いた作品「斜陽」から斜陽族という言い方が流行したが、まさに森家はそれを地でいくものだった。莫大な財産を一代で食いつぶした父親の生き方はどうすれば人が不幸になるのかというお手本のようなもので、その後の森の強烈な反面教師となった。

 小学4年で終戦を迎えると、学校教育は戦前の軍国教育とはうってかわって隔世の感があった。米国の民主主義教育には、「自由・平等・博愛・人権」を掲げる自由な時代の空気が流れていたのだ。この戦後の大転換は森にも否応なく影響した。中・高校生時代は生徒の主体性を重視する先生の自由な教育に刺激を受けながら多感な学生生活を送り、戦前、「軍人になろう」と決めていた目標はガラリと変わり、高校1年の時、森は「将来、社長になる」と豪語して担任の先生を驚かせている。
 森と同じ戦中派は戦前の軍国教育や戦後の民主主義教育など、複数の教育を受けている。後に、この戦中派がベンチャービジネスを興したり、大企業でも中興の祖として産業界をリードする人材を多く輩出するが、その要因の一つはこの複数の教育を受けたことにあるのは間違いない。森もまたそうした自由な時代の空気の中で、視野の広い思考力と逆境に強いタフな精神を養い、経営者としての素地を身につけていったのだろう。
 中学では当時はまだ珍しかったサッカー部に所属。クリエイティブなスポーツの楽しさに開眼した。勉強でも常に優等生だった森は進学校の住吉高校に進み、特に世界史や漢文が得意な少年だったようだ。
そして、大学受験の勉強に励む頃になると、「人間はなぜ生きるのか」「自分は将来、どういう生き方をすればいいのか」といった大テーマを悶々と考えるようになる。当時のノートにはこんな言葉が残っている。
 一、何が正しいか(どうすれば良いのか)を考えること
 一、正しいもの(考えた答え)に対して即、行動すること
 一、正しいものに対して心を賭けること
この短い箇条書きから、自らの人生と真正面に向き合い、必死に答えを模索する姿をうかがい知ることができる。後に森は、「考える力」は受験勉強の中から、「行動力」はサッカーを通して、また「賭ける心」は恋愛を通じて作り上げたと語っている。

幼少時代の森

 そうした「どのように生きるべきか」という命題に結論が出るのは大学時代である。昭和28年、森は約15倍の難関をくぐり抜けて大阪大学経済学部に入学。大学では、好きなサッカーはもちろん文学作品を読みふけったり、詩やクラシック音楽などにも深く触れ、友人との議論も森を大きく成長させた。
 大学3年の時、ついに高校時代から自分に課してきた「どう生きるべきか」というテーマにこんな結論を出す。
 ―苦しい時、いくら泣いてみたところで、それ以上どうしようもない。楽しいからといって、いくら有頂天になってもそれまでのこと。所詮、人間ははかない。人間の体は有限で、自分の頭で考えることは無限である。だとすれば、一度きりの人生をシゴキまくって生きてみよう―
 将来、起業することは決めていたが、ただ商売で身を立てるだけでなく、自分を高め、他人も生かせる最も人間らしい生き方をする。後世に残すのはお金ではなく、事業や組織を残す。
 それが、森の答えだった。
 この時の決意についてはこんな言葉で残している。
―心の旅路の地図を持ち、最も人間らしい生き方を!地には正義を人には愛を―
 当時、森が苦闘の末に導き出したこの言葉は生涯にわたる信条となる。正義とは、誰もが正しいと思うことを実践すること。愛とは自分を取り巻く全ての人を好きになることである。そうした人間主義が森の考えた理想の生き方であった。

 
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