1. 鹿児島行き寝言作戦
小学校5年生の時、西は鹿児島へ行くことを決心した。きっかけは、島の本屋で立ち読みをした漫画だった。そこには、3階建ての建物が描かれていた。
完全なカルチャーショックだった。沖永良部島には、そんなに大きな建物はない。西は、街にでて、いろんなものを見てみたいと思った。沖永良部島から一番近い街は、鹿児島だった。
さっそく西は、どうすれば島を出ることができるか考えた。
一番確実なのは、鹿児島の私立の中学校を受験することだった。鹿児島の私立中学校といえば、ラサール中学校が有名だ。西は、次の日から、受験勉強に励んだ。友達が遊びにきても、机から離れようとしなかった。
しかし、勉強の甲斐なく、西はラサール中学の受験に失敗した。
だが意外にも、父は西の鹿児島行きを許可し、公立の城西中学校への入学の手続きをしてくれたのである。
実は、西は勉強以外にも、鹿児島行きの作戦を立てていたのだ。
それは、夜、両親の間で寝ているとき、
「かごしま、かごしま‥‥、うーん、かごしま」
とわざと聞こえるように寝言を言って、鹿児島行きを思いつめているとアピールしていた。
父は、西がわざと「かごしま」の寝言を言っているのを知っていた。鹿児島の中学への越境入学は、西の想いを汲み取った、父のはからいだった。
思いついたことは何でもやってみる。この行動力と強い想いこそ、西の成功の原点なのである。 |