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2. 夜の卵売り
西は、野球やサッカーなどより、むしろ、親の手伝いをしている方が楽しいと感じる子どもだった。
雑草抜き、ペンキ塗り、山羊乳配りなど、色々な仕事を手伝った。父もそんな西に、雑草を両手いっぱいに抜けば10円、山羊乳を近所に配り終われば10円と、仕事の成果によってお小遣いを渡していた。
小学校3年生の頃、西は卵の入った袋を、島の通りで売っていた。夢中で売り歩いたが、どうしても2、3袋売れ残ってしまう。
その日の夕方も、やはり卵は売れ残った。普段ならそのまま家に帰って晩御飯を食べるのだが、西はふと、
「もし、こんな夜遅く卵を売りに行ったら、どうなるんだろう?」
と思い、小学校の校長先生の家を訪ねた。
「西君どうしたんだね、こんな時間に」
玄関先に現れた西を見て、さすがに校長先生も驚いた。
「校長先生、卵を買ってください」
西は、卵の入った袋を突き出した。
そのときの校長先生の言葉を、西は今でも覚えている。普通なら「値段はいくら?」と尋ねるものだが、校長先生は、今までにない反応を示した。
「どのくらい売れ残っているんだね?」
そして、すぐに奥さんを呼んでこう言った。
「えらいだろう。こんな夜遅くまで家のために働いているなんて。卵を全部買ってあげなさい」
そして、翌日から毎日、完売することができた。昼間ある程度卵を売ったら、夕方までのんびり休み、夜になれば、先生の家に行くのだ。小学校の先生は、ちょうど三十人いたので、一ヶ月たつとまた最初の校長先生の家へ売りにいった。
「僕みたいな子どもでも、工夫すれば成功することができるんだ」
この時の成功体験は、西に強烈な印象を残し、将来の起業への大きな自信へとつながっていった。
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