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ミラクルメーカー 〜リピート率・紹介率8割の旅行会社〜

 

3. タダでもやりたいアルバイト

  西は、中学から親元を離れて鹿児島本土の学校へ通うほど独立心旺盛な子どもだった。自分はサラリーマンにはならない、絶対に何か商売をするものだと思っていた。

 西が甲南大学で経営学を学んでいた昭和40年代後半、日本には海外旅行ブームがわき起こっていた。

 昭和45年、ジャンボジェット機が就航し、それまで200人しか乗せられなかった旅客機が、一気に500人を運べるようになり、庶民の夢だった海外旅行がぐっと身近になっていた。旅行会社は大学生にまでマーケットを広げていた。

 そんな中、西は観光事業研究会というサークルに入って、旅行会社のチラシ配りのアルバイトを始めている。
 とはいっても、西が、ただ配るだけで満足するはずがなかった。どう人を配置すれば効率的かを考えていたのである。

 最初は、真横に2人を配置して配っていた。しかし、これではチラシを受取る人が続くと、うまく渡せなかった。ところが前後に配置してみると、前の者が渡しそこねても、後ろがカバーでき、まんべんなく渡すことができた。これだけのことで、抜群に効率があがったのである。

 この案は旅行会社に採用され、西は神戸地区一帯のアルバイトの責任者に抜擢される。アルバイトの人選から給料、配る場所や時間まで、西の裁量で決められるようになった。
「どうすれば100人のアルバイト学生が喜んで働いてくれるだろう?」
 まず、男子学生には女子大のチラシ配りに行かせることにした。そして、国立大学などの男子の多い場所には、必ず男子と女子がペアになるように行かせた。しかも当日にならないと誰が来るかわからないようにし、
「こんな感じの女の子が、校門の前で待ってるから」
 と伝えたので、男子学生は、わくわくしながら出かけていった。さらに、人通りが少ない時間帯は、一緒に喫茶店で休んでもいいことにした。

 コンパ感覚で参加できるこのアルバイトは、
「西君、お金はいらないから僕にも配らせて」
 と言われるほどになった。
 嬉しそうに働く後輩たちを見ながら西は、
「お金を稼ぐ以外の目的を用意すると、どんな仕事でも、喜んで取り組んでくれるようになる」
 と実感した。

 人が喜んで仕事をするノウハウは、後に西自身が、社員を動かす立場になった時にも発揮された。
 ジェイエスティのスタッフは、格安航空券だけのお客にも、数時間話し合って一緒に旅の計画を練ることもある。
 なぜ、彼らはそれほどまでにお客に尽くすことができるのか。何より旅好きのスタッフたちが、お客と「旅をつくりあげる」仕事を楽しんでいるからだ。

 
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