出会いを創造する 〜結婚情報サービスが拓く結婚新時代〜
6. 「楽しみ」追求したネット戦略
OMMG は、会員が「結婚したい」「結婚相手を見つけたい」という思いを果たすためのものである以上、交際相手を見つけてゴールインすることが活動の最終着地点となる。だが、それを目指す活動期間中に決定的に欠けているのは、「楽しみ」だった。
「例えば、地方に行けば、町医者がいて、電気屋さんもいて、いろんな職業や性格の人がいることで豊かな コミュニケーションや地域のネットワークが成立している 。ならば、 OMMG も、 お見合い的側面だけでなく、そうした会員同士がふれあい、楽しさを作り出す ネットワークをつくる ことで 、近所づきあいのようなコミュ二ケーションを生み出し、そのやりとりの中で結婚相手も見つけることができるのではないか」。
邦春には、ひとつの考えがあった。
その考えが、インターネットを使った新ブランドの展開である。邦春は、アメリカのインターネット市場をつぶさに研究し、この試みに自信があった。
95 年、邦春は二代目社長に就任すると、同年秋には業界初の会員制ネットワークサークルである新ブランド「オーネット( O − ne t)」の導入を決定。そして、 97 年2月の「オーネット」開始と同時に、松竹映画とのタイアップやタレントを起用する広告展開を矢継ぎ早に打ち出した。「オーネット」ブランドの導入に際しては、邦春の発案から、広告面で長年使用してきた「結婚情報」という言葉も外された。そこには、「マーケットで生き残るには、会社の視点ではなく、マーケットの視点で考える必要がある」という邦春の並々ならぬ決意があった。
OMMGからオーネットへ。
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「オーネット」のサイト画面 |
ネット時代の時流に乗った「オーネット」は、他人との関わりをできるだけ少なくしたいというデジタル世代にアピールし、しかも気恥ずかしさが伴うパートナー探しの垣根を低くするのに効果的だった。
そして、「結婚がすべてではないが、したくないわけではない」という年を追って拡大する、こうした考え方を持った独身層を、新しい顧客層として取り込んでいった。
そして、 99 年には、「ミレニアム婚ブーム」の影響もあって、多くの会員が押し寄せ、会員数は、過去最高の約6万 5000 人に達した。
このオーネットの導入は、後の業界の IT 化に先鞭をつけるもので、邦春の大きな方針転換は成功した、かに見えた。だが、そんな成功の裏には、大きな落とし穴も待ち受けていた。 |