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企業家・大内邦春・株式会社オーエムエムジー代表取締役社長

出会いを創造する 〜結婚情報サービスが拓く結婚新時代〜

9. 結婚新時代の幕開け

 2003 年は、結婚情報サービス業にとって、業界の新たな展開を予感させる年となった。というのも、日本政府が少子化社会対策基本法を施行し、この中で初めて少子化対策の一つとして、「結婚」そのものへの施策の必要性が盛り込まれたからだ。政府間では、これまで「結婚して家庭を持つこと」を円滑に進める社会的機能を十分に検討してこなかったことを再検討し、 2005 年1月には経済産業省で、結婚情報サービス業を含む結婚産業についての研究会も発足した。この研究会では、あくまで「結婚は当事者の自由な選択によるもの」という大原則に立ちながら、若年層の結婚を支援する産業の活性化を積極的に支援していく内容となった。

 それは、父・豊春が 25 年前、「若者の結婚の手助けをしたい」と願って、日本初の結婚情報サービス業を起業したひとつの思いが、政府を巻き込んだ国家レベルに舞台を移した瞬間であった。

 業界団体である結婚情報サービス協議会の理事長を務める邦春は、この研究会に委員の一人として参加し、現代の「結婚」を取り巻く現状について、積極的に発言した。

 「結婚というと、私たちはすぐに恋愛結婚を思い浮かべます。しかし、 40 年前と比べても、未婚人口を分母とした場合、恋愛結婚する人の割合はあまり変わっていません。それは、自分の力で相手を見つけて結婚までできる人の割合は、今も昔も、あまり変わっていないということを意味しています。大きく減ったのは、お見合い結婚です。かつての近所のつながりなどにみる地域のコミュニティーや企業・職場のサポートがほとんどなくなったことで、結婚適齢期の男女が出会える場所が限られたことが、今の晩婚化・非婚化を招いている大きな要因です」。

 また、研究会では、結婚に関する政府の衝撃的なデータも議題に上った。

その一つは、団塊ジュニア世代(主に現在の30代)の生涯未婚率( 50 歳時点で未婚である人の割合)である。現在、団塊ジュニア世代の男性は、未婚率が実に42・9%に上る。そして、政府はこの統計を踏まえて、彼らの世代の生涯未婚率が、「 20 %を越える可能性がある」と指摘しているのだ。つまり、生涯に一度も結婚しない男性の割合が「4人に1人」になるというわけだ。これは、その親の世代である団塊世代の生涯未婚率が 12 %だったのと比べると、飛躍的な伸びである。

 生涯未婚率の急激な上昇は、女性にとっても同じである。高学歴化している現代の女性にとっては、 20 代男性の半数近くがフリーターやニートである現在、結婚相手を見つけようにもなかなか見つからないのが現状なのだ。

 現在は、親も子どもも、すぐに結婚しなくても『そのうちに』と思っている。だが、今、日本がどのような国になっているのか。結婚相手を探そうと思っても、探せない社会的状況があると認識するようになった時、状況は大きく変わる。

 その時、結婚情報サービス業も飛躍的に変わらざるを得ない。

 「例えば、シンガポールでは、結婚の出会いの場を提供するビジネスを、政府主導で支援しています。その結果、シンガポールでは対象年齢層である 20 〜 44 歳の4人に1人が結婚情報サービスを利用しています。そう考えれば、少子化や未婚化が叫ばれる日本でも、結婚情報サービス業はまだまだ伸びる可能性を秘めているんです」。

 

 邦春は、今、オーエムエムジーという一企業の成長だけに執着していない。目指すのは、結婚を社会的にサポートしていた、かつての古き良き日本のコミュニティーを、結婚情報サービス業によって再生することだ。それは、結婚情報サービス業のパイオニアであるオーエムエムジーの社会的使命であり、邦春の夢でもある。

 もちろん、それは簡単なことではない。あえて言うなら、 J リーグの100年構想にも似た、壮大な構想である。今、邦春は、そんな遠い先の夢を見つめながら、一つひとつ着実に結婚ネットワークづくりに励んでいる。
 
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